TBS「NEWS23」の特集『安倍解体新書(6)“再チャレンジできない”』(2006年11月21日放送)を見て、派遣しかできない人、アルバイトしかできない人、ニートな人たちが出てきたけど、彼らを見ていると、身につまされることがすごく多い。

なぜなら、一歩間違えば私も必ずそうなっていたからだ。

テレビの画面に出てくる人たちと同じような危機感を私が持ったのはTPD(東京パフォーマンスドール)のライブを追っかけ、貯金がみるみるなくなり、全財産が1万5000円になったときだ。

そのときまだアルバイトをしていたため、完全失業者になって路頭に迷うことはなかったものの、ミュージシャンとしての夢も破れ、これからどう生きていこうか途方に暮れかけたときだった。

まだ、夢を持っていれば夢を食べながら貧乏でも生きていける。
けれど、夢破れたとき、将来に対する測り知れない不安感が体全体を包み、時に恐怖感と虚脱感で眠れなくなる日がやってくる。

そういう人たちのために“再チャレンジ”できるような社会にしようというのが今の安倍晋三首相の所信だが、現実は“再チャレンジ”とはほど遠いと「NEWS23」の特集で報道している。それほど格差社会は広がっている。それは私もひしひしと感じる。

私は運良くというか、なんとかアイドル業界に身を置いて会社を設立できることができたわけだが、一寸先は闇。何がどう転ぶかなんて自分だってわからない。ただ、少なくともミュージシャンの夢は破れたものの、“再チャレンジ”できたわけだ。

芸能人の再チャレンジ


ミュージシャン、タレント、アイドル、俳優、芸人、スポーツ選手らは、その道に秀でてその道一筋で専門にやってきた人がほとんどなため、引退後の再チャレンジはそんなに簡単ではない。

将来のことを考えながら現役生活を送ったり副業を考えたりできる能力を持つ人は稀(まれ)だ。そもそもそういう能力を持つ人は熟慮の末、カタギな道を選ぶものだと思う。

芸能人、特にアイドルの再チャレンジは大変に難しい。名前を変えて再出発しても売れないものは売れない。そしていわゆる“アイドルの賞味期限”は誰にでも平等に短いのだ。AV女優に転身したとしてもさほど変わるわけではない。

アイドルがアイドルでなくなったとき、いったい何に“再チャレンジ”できるのだろう。……悲しいことにいちばん考えられる方法は“玉の輿”なのかもしれない。一生食いっぱぐれないセレブな男性と結婚する方法だ。

A級とまではいかなくとも、わりと名の知られた元・アイドルのその後のほとんどは、お世辞にも華々しいものとはいえない。よく言われることだが、芸能の世界は当たるスポットライトの光が強い分だけ、その陰の部分も暗く深いのだ。

アイドルになろうとする人は本当はそういう覚悟を持ったうえで始めてほしいものだが、現実は年齢的に若すぎてそんなことを考えることはできない。

アイヲタの再チャレンジ


そもそも“アイドルファン”なるものは、現実逃避なモラトリアム気質が非常に強いため、5年も10年も20年も経っても外見も中身も変わらない人が非常に多い。

通常な恋愛をし、結婚をし、家庭も家族もいながら“アイドルおたく”でいつづけるのは正直言って無理だと私は断言する。そんなのはインチキだ(笑)。

アイドルヲタがその生態を維持できるのは、生活基盤だけはなぜかしっかりしてるからだ。アイドルヲタにエリートが多いのも関係しているが、生活を維持しながらモラトリアムを続けられる生活力だけはみな持っている。

……とはいえ、このまま40になり50になり……と考えたときに自分自身がどういうポジションでいるのかはやっぱ考えておかないとちょっと怖い。アキバのアイドルイベントに50代以上と思われるお客さんはかなり少ない。いもうと倶楽部の会員限定撮影会にはいるかもしれないが。

アイドルファンがアイドルと結婚したいと真剣に思っているかどうかは知らないが、たとえばの話、アイドルファンがアイドルと結婚するためには、“アイドルファン”という立場から脱出しないといけない(もちろん例外はある)。

マネージャーになる、制作側の人間になる、広告主側の人間になる、メディア側の人間になるなどの“再チャレンジ”が必要だと思う。果たしてその“再チャレンジ”は大変なのだろうか……。

それは本人次第だと思う。私はアイドルと結婚するためにメディア側の人間になったわけではないけれど、アイドルと結婚する可能性だってないとは限らない。ただ、ファンでいるときと比べると100倍つらいことがあるかもしれない、とだけは言っておこう(苦笑)。

ニートの再チャレンジ


私自身が迷宮に迷い込んでいたとき、かすかな光を差してくれたのは「金持ち父さん貧乏父さん」(ロバート・キヨサキ)だったり、「思考は現実化する―アクション・マニュアル、索引つき」(ナポレオン・ヒル)だったりした。

果たしてこういう本が私のblog読者に意味があるかどうかは分からないが、ある種の夢を現実化するためにはマインド・トレーニングは必要だと思う。

それは、アイドル本人であれ、アイドル志望者であれ、業界関係者であれ、アイドルファンであれ、それ以外の人であれ、ニートの人であれ、だ。

今、迷宮から抜け出せない人は、心の持ち方、気持ちのありようでなんらかの糸口が開けるかもしれない。実は私自身も常にいろんな迷宮の中に迷い込んでいたりするのだ。だから自分自身の発奮材料としてわざとこういった硬いブログを書いてたりするのである。