NHKに「プロフェッショナル」という番組がある。「プロジェクトX」に続きNHKが力を入れている番組で、脳科学者の茂木健一郎氏がキャスターとなってプロの仕事の流儀を掘り下げていく番組だ。本放送だけでなく、昼も深夜も再放送をやっているので、あえて録画はしないが、ついつい引き寄せられて見入ってしまうことが多い。

11月23日の再放送を29日の深夜にやっていた。羽生善治スガシカオ、奥山清行(カーデザイナー)のトークスペシャル。

根拠のない自信


スガシカオが順調にいっていたサラリーマン生活を辞め、将来が全く見えないミュージシャンになろうと決断したとき、「根拠のない自信」があったという。でもそれは彼にとって必然な選択だったはずだ。

私の人生のなかで「根拠のない自信」を持った経験はあっただろうか、と考えてみると、どうも記憶が定かではない。

ただ、メディアとしての「スクランブルエッグ」は紙においてもWebにおいても【できるだけファン目線でアイドルを発掘して応援する】という意味で画期的なことで、商業的成功は難しいと思っていたが、続けていけば必ずある層に支持されることだけは妙に「根拠のない自信」を初めから持っていたような気がする。今でもそう思い続けている。

「根拠のない自信」とは違った言葉だが、つい最近同じようなニュアンスのメールを送った。スクランブルエッグのオーディションでグランプリとなった友梨へのメール。「友梨が売れるという妙な自信だけはあるんだよね」……みたいな内容。

もちろん全く根拠はない。芸能人が売れるかどうかの根拠など、あてになるわけがない。だけど、私が彼女に何かを強く感じているんだと思う。まだ目に見える形にはなっていないが、その根拠のない自信は少しずつ私の中で確からしさを増してきている。

そういえばAKB48も


ちょうど1年近く前、AKB48の関係者用ゲネプロ、一般公開初日を続けて見たときも、なんだかわからない戸惑いと興奮を覚えた。そのときの興奮をものすごく控えめに『「AKB48」の読み解き方』というコラムに記した。

そこまで控えめにしなければいけなかったのは、まずコラムの読者が自分で劇場まで運び、自分の目で見てから判断してほしかったからだ。押しつけることなく、AKB48を体験してもらうためのナビゲートだけすれば、あとは勝手に転がっていくという「根拠のない自信」があった。

まあ、AKB48の場合は根拠がないわけではなかった。コンテンツがこれだけ良ければ、あとは繰り返せば自ずと人は集まることは少なくとも私には経験上分かっていた。ただ、芸事は何がどう転ぶかわからないのが常。スタッフやメンバーのほんのちょっとした失敗でファンから総スカンを喰らうことだってあるのだ。

スガシカオのスランプ


スガシカオが3年近くスランプに陥っていたことがあるという。それをどう解決したのかは忘れてしまったが、スランプに陥った人のために彼がアドバイスすることがあるとすれば、という問いに「10歩も20歩も進もうと思わずに目の前の小さな一歩を踏み出すこと」と答えたことだけは強く印象に残っている。

そうなんだよ。それはわかってるんだよ。でもスランプになってるときにはその一歩すら踏み出せないと思い込んでしまうんだよ!

いつもそうだ。私もそうだ。私はモチベーションが高まらず仕事が進まないことがしょっちゅう起こる。あたかも体質であるかのように小学校の宿題のときからずっとだ。もちろんエンジンがかかってしまいさえすれば、あっという間にエンジン全開になって突っ走れるのだが、そのエンジンをかけるのが大変なのだ。

で、今でも「満腹は敵だ!」とか張り紙したり「酒はまとめて飲むな!」とか自分に言い聞かせたりして、エンジンをかかりやすくするために努力はするものの、失敗を繰り返してばかりだ(苦笑)。

あげくの果ては「時が来るまで待て!」と、部屋の明かりを消し、無音にして座禅を組んでヤル気を出そうとするが、たいてい失敗して寝てしまう(苦笑)。

で、結局のところ、解決するときは「何でもいいからほんのちょっとしたことに手をつける」ことだったりして、結局スガシカオが言ってることそのものだったりするのだ。あー情けない。

努力をする姿勢を持ち続けること


棋士・羽生善治は「天才とは努力をする姿勢を持ち続けること」だと言う。天才と言われる彼をしてそう言わしめるわけだから、我々凡人はとにかく努力しなくてはいけないのだ。

アイドル志望の人に私がよく言うのは「『自分でやめる』って言わない限り(自分のやりたいことは)ずっと続けられるものだよ」という言葉だ。自分のモチベーションが下がらない限り、なんとか続けられるものだ。それは若輩者ながら私の何度にもわたる経験、何十年か生きてきた経験からはっきり言うことができる。

でもそれを続けるためには相当の覚悟と努力は必要だ。そこまでしてやれるか、なぜそれをやるのか、というのを常に自分に問い続け、やり続けなければならない。それは時には苦しいし、時にはすごく楽しい。

高橋みなみの姿勢はすごい


今日(日付は昨日になる11月29日)、久々にAKB48劇場でチームAの公演を見ることができた。しばらく見ないうちにメンバーそれぞれの成長具合を確認できたが、この日私はすごい発見をしてしまった。

「高橋みなみが本気を出してる!」

いや、別に高橋みなみちゃんが手抜きをしているとは思ってはいないが、彼女の場合、感情が表情に出にくいのでステージを見てる限り、どこまでやる気で本気なのかがよく分からないのだ。

もちろん直接話したりして人柄が分かればもっと早くわかってあげられるのだが、勝負は舞台と観客席でしたいじゃないか。取材で見ようが観客として見ようがこっちはいつも真剣勝負だ(笑)。

久々に劇場で見た高橋みなみは自分を偽ることなく、歌も振り付けも、メインであろうがサブであろうが真剣にやろうとしていた。それが体の動きや顔の表情にはっきりと目に見える形で出てきているのが本当にうれしかった。

そういう姿勢を私はAKB48のメンバーに求めているし、それを続ければ必ず結果がついてくる。「心技体」とはこういうことだ。彼女のやる気に私も勇気がわいた。私もうかうかしてられない。

今日の一歩は?


さてここで一つお訊ねするが、今日のみなさんの一歩は何だろう? チケットを取るために並ぶこと? いや、そんなことじゃなくて(笑)、自分の夢を実現させるためにやるべき今日の一歩はなんだろう。

なるべく小さいほうがいい。なぜなら進みやすくなるから。できるだけ長く続けられるようなできるだけ小さいことがいい。何もない? じゃあダイエットとかどう?

私が今やっていることは本当に小さなことばかりで、それがあとからどういう形になるのかもわからないことも正直多い。それでも、止まるわけにはいかない。いつか川になり海になるためのほんのひとしずくを作っているだけ。

やりたくないこともたくさんある。でもこれをやらないと前へ進めない。だから小さい一歩を踏み出すしかないのだ。

今、ここでブログを書いているのもその「小さな一歩」そのものだ。
さあ、仕事をしよう。
つまづいたらこのブログをもう一回読み返そう。