最近思うんですが、写真がうまくなる秘訣の一番は「被写体を好きになる」ということなんだとつくづく思います。

特にポートレートやグラビアの撮影とかでは、カメラマンとタレントのコミュニケーション、つまり、カメラマンが被写体を好きにならなきゃ絶対何も始まらないと思います。どっちが攻めてどっちが守るというわけでもなく、フォトセッションに向かう気構えはどちらの側にも大切だと思います。

次のサイト表紙になってくれる女の子の撮影を昨日したのですが、いつものことだけどやっぱり惚れちゃう。この感情ってどういうものなんだろうってよく思うのですが、自分でも整理しきれてません。

撮影前の打ち合わせで、どういう角度がいい?とか、どういう雰囲気に仕上がるのが好き?とか、一応は訊いてみたりするんですが、それは撮られる側にもこれから撮られるという心の準備をしてもらうためのもので、そんな話と雑談の中からどんな表情がよさそうかを探るわけです。

その時点でどんな子でも「好きになろう」とします。

撮影が始まると、表情とポーズの組み合わせでカットを変えていくんですが、いいカットが撮れたときにはやはり「いい」って伝えるようにしてます。その場で伝えるともっと頑張ってくれるから。アマチュアのカメラマンが撮影会でモデルに対して「いい」と伝えるのは難しいかもしれませんけど、無言、無表情で撮ってるよりは、モデルに新しい発見をしたときにはそれを伝えてあげるのは大切なことだと思います。

撮ってる最中は「被写体を好きになる」ことよりは、写真として収めることを考えるのでファインダー越しでいいかどうか、撮ったものをカメラの液晶画面で見てどうか、ということでかなり真剣です。

その真剣さは伝わってるはずだと思います。

一流カメラマンのような技術も経験も私にはないので、できる限りタレントとコミュニケーションを取ってどういう絵が撮りたいのかをなるべく具体的な言葉で伝えることで、自分なりに「愛がある」写真を撮りたいと思っています。

撮影が終わって時間があるときには、こういう表情が良かったとか、こういう衣装(水着)が映えるとか、身体のこの部分に魅力があるとか、私なりの感想を伝えて解散するときには80%ぐらい「好き」になってます(笑)。

仕事場に戻って写真の整理をして、さらに「好きになる」というか「惚ける(ほうける)」時間が、たぶんカメラマンとして一番楽しい時間なんじゃないかと思います。と同時にライティング、構図、ポーズのつけ方、表情の伝え方などの反省点も見つけながら、もし同じような機会があったらどうやって撮ろうかって考えたりもします。

残念ながらサイト表紙の撮影で同じ人を撮ることが滅多にないので、時間に余裕のある撮りおろしはなかなかできないのが残念ですけど。評判のいい子はやっぱなんとかしてグラビア撮影を作品として残しておきたいという気持ちが強くなるばかりです。

そんなこんなで次から次へと「好きな子」ができてしまう、ある意味浮気性な職業ですが、アイドルってそういう“浮気性”なファン、編集者、カメラマンetcで成り立っている商売なので、一瞬で好きになってもらうことは大切なことだと思います。私がマネージャーに向いてないのは、浮気性な側にいるからなんでしょう、きっと。

4月1日から表紙になってくれる子は、今年からグラビア進出して、6月にDVDを出す21歳の女の子です。結構良く撮れたといいますか、彼女が現在持っているものをかなり出せたと思うので、これからもっと輝いてくれることでしょう。そうなってほしいと心から願って写真整理をしています。
基礎から始めるプロのためのポートレイトライティング (コマーシャル・フォト・シリーズ)
フォトテクニックデジタル 2008年 04月号 [雑誌]